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第11話 再生者の責任
【第10話 思い切りが肝心のハイライト】 剪定(せんてい)により、病気や害虫に侵された部分を取り除いた父子。 いよいよ、収穫にむけた作業に取り掛かると思いきや、 それよりもしなければならいことがある、と父は語る。 父:ハルオ:「非常に重要な作業が残っている。」 息子:ハルオjr:「重要な作業って何よ?」 父:「ふつう、手術をした部分はどうする?」 子:「は?えー、まあ包帯とか巻くんじゃない?」 父:「そうだな。ばい菌なんかが入るのを防ぐだろう?木も一緒だ。切断面は弱い。」 子:「で?どうするの?」 父:「薬を塗る。」 ![]() 子:「これはどういう薬?」 父:「殺菌剤だ。切断面をコーティングするから外からの菌の侵入も防げるというわけだな。」 子:「ますます人間臭いな『たんかん』。」 父:「一通り塗り終わったら、次の作業だ。」 子:「うん。何すんの?」 父:「切ってしまった枝があるだろう?それは患部ということになるな。そこにはまだ病原菌がいる。」 子:「たしかに。」 父:「もし、それを放っておけばどうなる?」 子:「まあ、菌はしばらく生きてるだろうね。」 父:「そうだ。そうすれば、その菌がせっかく剪定(せんてい)した木にまた入り込むかもしれん。」 子:「たしかに。」 父:「最悪なのは、この園だけじゃなくて周りの園にも病気がうつっていくことだな。」 子:「…再生をした意味が無くなるってわけか。」 父:「そうだ。こういう時の処理の仕方は決まっている。燃やすんだ。というより他に方法がない。これだけの量の廃棄物を処理するのは大変だからな。」 子:「なるほど。」 解説:たき火などは法律で禁止されています。(危険性の問題とダイオキシン抑制のためだそうですが、詳しくは分かりません。)位置づけが難しいらしく、ある程度自治体ごとに条例によって色々と決められているそうです。農業における廃棄物などの償却はやむを得ない行為として認められています。ただし、無条件にしてもいいというわけではなく、消防などに連絡が必要だったりします。屋久島でも焼却の際には管轄の分遣所に届けます。 ![]() 子:「暑い…。」 父:「キリキリ燃やせよ。」 子:「分かってるよ。しかし、良く燃えるな~生木なのに。」 解説:柑橘の樹木は油分を大量に含んでいるため、良く燃えます。とはいえ、あまり大規模に燃やすと危ないので管理できる範囲内で燃やします。この時は切った量が大量だったため、まる3日間ほど燃やす作業に費やしています。 父:「こうして周囲に病気を伝播させない、というのも再生者の責任だな。それが出来なければやっている意味がないからな。」 子:「再生者の責任…か。重い言葉だな。」 父:「そうだな。でもこれは常に頭の隅に置いておかなければならんぞ。」 子:「…分かったよ。」 父:「さて、これでとりあえず取っ掛かりの作業は終わりだな。」 子:「そうなの?」 父:「あとは術後の経過を観察するというところだ。」 子:「ますます、人間の手術と同じだ…。」 父:「木の体力が回復しない事にはどうにも手がつけられんからな。」 子:「木も生き物だってことだなぁ。」 父:「しかし、これで再生の一番大事だと思われる頭のところの作業は分かったな。」 解説:ここまでの作業は県や町の技術員という専門家に意見を聞きながら進めています。話にすると4話~11話の8話分ですが、実際には他の仕事も間に挟みながら2ヶ月かかっています。 子:「じゃあ、しばらくは別の仕事をしながら様子見ってとこか。」 父:「…。…それなんだがな。」 子:「沈黙のあとのもったいぶった言い方って嫌な予感しかしないんだけど。」 父:「(苦笑)実はな、再生農園を広げようと思っている。」 子:「え!?」 園地の整備から始まり、土壌改良、病気・害虫に侵された部分の切除、 切断した患部の焼却処分と農園再生の第一段階を終えた父子。 ホッとしたのもつかの間、父から出た言葉は衝撃的なものだった。 次回"第12話 再生農園拡大!?"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第4話 父子で道を切り拓け! 第5話 光をさえぎるもの 第6話 地をはうもの 第7話 父の夢 第8話 農と業と農業 第9話 人間だって同じ 第10話 思い切りが肝心 |
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