第22話 プロジェクトからの広がり 将来の夢編
【第21話 プロジェクトからの広がり 近未来編のハイライト】 屋久島農園再生プロジェクトからのプランを広げていく父子。 近い未来の展開として「ブログ」「体験」「通販」を行うことに決めた。 次は本当に目指すべき将来の目標を定めていくこととなる。 父:ハルオ:「プロジェクトの将来…となると、やっぱり規模の拡大ってことになるな。」 息子:ハルオjr:「うん。そうなるね。」 父:「まあ、うまく行った場合の話だがな。」 子:「でも、はじめに方向性として拡大するつもりがあるのか、ないのかでそれから先の展開が変わってくるんじゃないかって思うんだよね。」 父:「拡大できずに自分たちで出来る範囲でプロジェクトが終わってしまうと成功とは呼べないしな。」 子:「それでも、ある程度再生ができれば成功は成功だろうけど。」 父:「いや、本当の意味で再生と呼べるのは、現在の耕作放棄地を使って農業をしようとする人を増やせる状態にもっていくということになるだろう。」 子:「本当の意味でってことなら、そうなるね。」 父:「はじめにこのプロジェクトの話を聞いた時に、期待できるのはモデルケースとしての役割だと感じた。つまり、こういうやり方もできますよ、という提案だな。同じことをやるかどうかは別として。」 子:「モデルケースになりたいっていうのは確かに考えた。なんならマネされてもいいんじゃないかって。」 父:「それで、耕作放棄地の問題が少しでも解決するなら、だがな。といっても、このプロジェクトが成功しないとマネしたいって思う人すら出てこないがな。」 子:「…たしかに。」 父:「それで、どうやって拡大するんだ?」 子:「うん。今考えている基本的なパターンは2つ。 1つはプロジェクトそのものを事業化して就農希望者を雇用するっていうパターン。 もう1つはプロジェクトに参加したいって農家が出てきたときに共同でおこなうパターン。」 父:「事業化パターンはプロジェクトそのものが収益をあげること、共同パターンはやりたいと農家に思わせることがそれぞれ最大の壁になるな。」 子:「うん。そのための準備を自分たちで出来る範囲でやっているうちにしないとね。」 父:「そうだな。」 子:「具体的には、ノウハウの蓄積ってことになるのかな。経営手法と農業と両方の。そして、モデルとノウハウを参加したい農家とか就農希望者に伝えるって形だね。」 ![]() 父:「いざ拡大するという場合になったら、その伝え方も考える必要があるな。」 子:「伝え方?」 父:「農家が、サポートメンバーの管理や情報発信を簡単に出来るって考えてはいかんということだ。特に情報発信はな。何をどの程度、どのように発信するのか、明確になっていないと分からんだろう。」 子:「テンプレを用意しろってこと?」 父:「テンプレが何かはよく分からんが、マニュアルのようなものは必要だろうな。」 子:「いずれにしても、プロジェクトが成功して収益をあげられないと先には進まないね。」 父:「そうだな。そのためにはサポートメンバーをきちんと集める方策が必要になってくるな。」 参照:第17話 本当に得たいものは得難い存在 子:「そこが一番難しいんだよな~。潜在的に屋久島に興味があって、農業問題を意識してる人って結構いると思うんだよね。だけど、それをどうやって見つけるのかっていうところだもんね。」 父:「考えてなかったのか?」 子:「いや、考えてないわけじゃないよ。ネットを中心に、並行して人脈をたどっていくって方法にするのはもう決めてるからね。」 父:「まあ、他にやりようはないだろうな。」 子:「いや、あるにはあると思う。例えば、島内のレストランとか民宿とかにポスターを貼らせてもらうとかね。だけど、それはもう一歩進んだ後の話にしたいんだ。」 父:「もう一歩というのは?」 子:「今はまだ秘密。」 父:「ふん…。まあいい。」 子:「それはそうと、もう1つ将来の展望を考えているんだ。」 プロジェクトの拡大を将来の目標に据えた父子。 父子で行うプロジェクトはそのための準備期間となるのであった。 この拡大について父子で意見が割れることになるのだが、それはまだ先の話。 息子はさらにもう1つ展望を考えているという。 次回"第23話 プロジェクトと父の夢の接点"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1章 「農園再生導入編」まとめ(第1話~第14話) 第15話 農園再生の弱点 第16話 父よ、「CSA」を知っているか? 第17話 本当に得たいものは得難い存在 第18話 肝心なのは共有すること 第19話 プロジェクトの骨子 第20話 目指すべき地点 第21話 プロジェクトからの広がり 近未来編 スポンサーサイト
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第21話 プロジェクトからの広がり 近未来編
【第20話 目指すべき地点のハイライト】 農園再生のゴールは「3年連続で10aあたり1トン以上の収穫が出来た時」に決まった。 プロジェクトを出発点とした展望・展開を考え、幅を持たせていく検討にとりかかる。 父:ハルオ:「その、展望というのはどう考えているんだ?」 息子:ハルオjr:「大きく分けると、2つの展望が考えられるんだよ。1つは近い…それこそ、2年後、3年後の展望。もう一つは将来…最終的にむかう展望。とりあえず、近い展望からだね。」 父:「展望の目的はなんだ?」 子:「近い展望の目的はプロジェクトそのものを広げて行くことにポイントを絞りたいと思う。まず、プロジェクトを知ってもらうのが先決だからね。」 父:「たしかにそうだな。」 子:「知ってもらうためには、逆に何を知らないか?を考えるのが早いんじゃないかって思ったんだよね。」 父:「知らない事、か。」 子:「うん。こっちは当たり前に知っていても、向こうは知らないってことはたくさんあるからね。サポートメンバーに向けてメルマガを送ろうと思ったのもそこだし。まずサポートメンバーに屋久島と屋久島の農業について詳しくなってもらおうって思ったわけだから。」 解説:サポートメンバーとは正確には「プロジェクトサポートメンバー」のことです。「屋久島農園再生プロジェクト」に対し、支援をしてくれる人たちのことで、年間に5000円をお支払いただきます。それに対して、再生農園で採れた「たんかん5kg」と隔月(奇数月)のメールマガジン、サポートメンバー証の発行を行います。 参照:第19話 プロジェクトの骨子 父:「それは、分かる。だが、展望というのはサポートメンバーに限った話ではないんだろう?」 子:「もちろん。サポートメンバーによりプロジェクトを楽しんでもらうためではあるけど、非サポートメンバーにプロジェクトを知ってもらうためのアイテムになりうる方がいいと思うし。」 父:「それで、何を知ってもらうつもりなんだ?」 子:「うん。まず農園再生について。どんな場所で、どんなことをしているのか、だね。」 父:「どうやって?」 子:「ブログで発信するっていうのが、一番手軽だと思う。」 解説:この考え方をもとに始めたのが当ブログです。 子:「だけど、情報として知ることにはなっても、それ以上はなかなか難しい。文章だけでインパクトとか感動をってなると、プロの書き手の力量がいるから。オレが書くんだけど、そこまでは無理だし。」 父:「手詰まりか?」 子:「いや、百聞は一見にしかずっていうじゃない?だから、直接体験してもらえばいい。題して『農園再生体験』!」 ![]() 父:「別に題さなくてもいいんだが…。観光農園をやるってことか?」 子:「観光農園じゃなくて、『体験』だね。収穫がメインじゃなくて、むしろ日々の作業を体験してもらう方がいいと思ってる。こういう作業を経て、農園再生をしていますってね。だいたい、『たんかん』の収穫時期って観光客が一番少ない時期だし。サポートメンバー向けに始めていって、最終的には非サポートメンバーも募集して再生体験をしてもらえる形にするんだ。そうすれば、五感に訴える形で農園再生プロジェクトを知ってもらうことができるわけだから。」 父:「たしかに、体験にしてみるっていうのは面白いかもしれんな。」 子:「そして、もうひとつ知ってもらうのは『たんかん』そのものだね。」 ![]() 父:「屋久島最大の特産品だからな。」 子:「それに『たんかん』の味は他の柑橘(かんきつ)…いや果物にも負けないものがあると思うし。」 父:「甘味、酸味、ジューシーさを兼ね備えているからな。」 解説:「たんかん」はぽんかんとネーブルの自然配合種だといわれています。 ぽんかんの香り、ネーブルのジューシーさに加え、甘味と酸味のバランスに優れています。 生産地は沖縄~南九州まで。屋久島は冬の昼夜の寒暖の差がその栽培に適しているといわれ、屋久島産の「たんかん」は特に甘味と酸味のバランスがいいです。 そのため、青果市場でも柑橘としては高値で取引されているのです。 子:「だけど、知名度ってどうなんだろう?島外にいる時ほとんど見たことがないんだけど。」 父:「出荷はほとんど鹿児島の青果市場までだからな。個販があるとはいえ、絶対量はごくわずかだ。だから、全国的な知名度はまだまだ低いと言わざるを得ない。しかし、どうやって知ってもらうんだ?」 子:「通販をやる。まあ、最初はサポートメンバー向けになるし、サポートメンバーにそれぞれ5kg送った後に余力があればってことになるから限定販売になるけど。」 父:「体験と同じように、非サポートメンバーにもすそ野を広げていくってことなんだな?」 子:「そう。まあ、その場合商品構成を考えないといけないけどね。」 父:「収穫出来た『たんかん』に無駄がでないし、それはいいな。」 子:「ただでさえ忙しい時期にさらに…ってことだから、覚悟はいるけどね。ま、なんとかなるでしょ。」 父:「やらざるを得ない、ところだろうからな。」 子:「うん。そんなわけで、ブログはプロジェクト発足後すぐに、体験と通販は2013年度にキックオフを目指そうと思う。」 父:「準備期間が短いような気もするが、それくらいはやらないといかんだろうな。」 子:「まあ、具体的にはこれから1年かけてじっくり考えていけばいいからね。よし!そして次は将来的な展望だ。」 プロジェクトの広がりとして、またプロジェクトを広げるために「ブログ」「農園再生体験」「通販」をすることにした父子。 具体的な内容はこれからじっくりと考えプランニングすることとなった。 次は、もっと遠い未来の展望を検討していくのだった。 次回"第22話 プロジェクトからの広がり 将来の夢編"に続く 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1章 「農園再生導入編」まとめ(第1話~第14話) 第15話 農園再生の弱点 第16話 父よ、「CSA」を知っているか? 第17話 本当に得たいものは得難い存在 第18話 肝心なのは共有すること 第19話 プロジェクトの骨子 第20話 目指すべき地点 |
第20話 目指すべき地点
【第19話 プロジェクトの骨子のハイライト】 ![]() いよいよ見えてきた「屋久島農園再生プロジェクト」の基本構造。 この骨子をもとにプロジェクトが形作られていく。 息子:ハルオjr:カタカタカタ…。「なるほど。よし!」 父:ハルオ:「何がなるほどなんだ?パソコンに向かって…。変なヤツだな。」 子:「うるさいな!それよりもさ、いいアイデアがあるんだけど。」 父:「なんだ?」 子:「前の会社の時に一緒だった八女さんって人がいるんだけどさ、その人にこういう企画をやろうって考えてます、ってメールを送ってみたんだよ。」 解説:八女さんは熊本在住の方です。某企業で企画・開発を専門にされていた技術者の方で、現在は技術系企画・開発コンサルタントをされています。 息子の企画手法の師匠で、現在でもいろいろなアドバイスをいただいています。 名前は彼の出身地からとりました。 父:「それで?」 子:「そしたら、参加型の企画だから共有できる『ゴール』を設定してみたらどうかってアドバイスをもらった。」 父:「ゴール、か。」 子:「うん。どのような状態になったら農園が再生出来たのかってことが分かれば、状況の説明もしやすいし、何よりサポートメンバーも参加しやすいと思う。」 父:「通常、たんかん園は10aあたり1.2トンの収獲があるって言われている。これが基準になるだろうな。」 子:「再生農園でそれは可能?」 父:「時間をかければ可能だろうが、どのくらいかかるかは分からんな。」 子:「再生農園ってことを考慮して、もうちょっと少なくてもいいかもしれんね。10aあたり1トンくらいだったらどうだろう?」 父:「妥当なところだろうな。だが、たまたま豊作の年に当たってそれを達成したとしても、ゴールにしてしまうのか?」 子:「ああ…そういうこともあるのか。たまたま豊作の年があって、それで達成しても意味がないね。…じゃあ、確実性をもう少し付け加えて、3年連続で10aあたり1トンを達成できた時、だったらどうだろう?」 父:「それなら、再生出来たっていえるかもしれんな。それがいい。」 子:「じゃあ、それでゴールは決まりだね。さて、次は展望だな…。」 父:「展望?」 子:「うん。だって、農園を再生させて終わりですってだけじゃつまらないじゃない?そこから何かないとさ。それに、このプロジェクトを知ってもらうとか興味を持ってもらう方法も考えないといけないし。」 農園再生のゴールは「3年連続で10aあたり1トン以上の収穫が出来た時」に決まった。 次はプロジェクトの展望だと息子はいう。 次回"第21話 プロジェクトからの広がり 近未来編"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1章 「農園再生導入編」まとめ(第1話~第14話) 第15話 農園再生の弱点 第16話 父よ、「CSA」を知っているか? 第17話 本当に得たいものは得難い存在 第18話 肝心なのは共有すること 第19話 プロジェクトの骨子 |
第19話 プロジェクトの骨子
【第18話 肝心なのは共有することのハイライト】 息子の案は支援をしてくれた人に『たんかん』を送るだけでなく、情報も送るというものだった。 それは、『広がり』に繋がって欲しいという願いでもあった。 父子はこの案の実現性と『広がり』の可能性を確かめるため。「下ン牧さん」に相談に向かう。 父:ハルオ:「こんにちは。お世話になります。」 息子:ハルオjr「こんにちはーっ!」 下ン牧(しもんまき):「こんにちは。相談って何?」 子:「実はですね、今父子で農園再生というのに取り組んでまして。」 下:「農園再生?」 父:「要は耕作放棄地を再生させて、有効活用しようということです。病害虫も防ぐことになりますし、常々考えている村おこしにも繋がっていくと思っています。」 参照:第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第7話 父の夢 下:「ふーん、なるほど。それはいい事ですね。地域貢献にもなりますし。それで?」 子:「作業的には父子二人でできる範囲でしか今のところはやっていないので問題ないんですけど、運営的にどうしても壁があって…。」 参照:第15話 農園再生の弱点 下:「そうだよね。再生させてからじゃないと収入ないもんね。」 子:「はい。だから、CSAという農業支援、農業経営の方法を取り入れたいな、と。ただ、そのままでは屋久島では使えないので、屋久島風に、農園再生風にアレンジしようと思ってます。」 参照:第16話 父よ、「CSA」を知っているか? 下:「それはどういう風にアレンジするんですか?」 父:「詳しくは、ハルオJrから聞いてください。」 子:「ええ。まず、農園再生という取り組みに対して支援を募ります。」 下:「それは、資金的にって意味だよね?いくらで考えてるの?」 子:「5000円くらいですね。」 下:「それくらいなら、支援しやすいね。それで?」 子:「それで、支援してくれた方に再生農園でとれた『たんかん』を5kg送ります。」 参照:第17話 本当に得たいものは得難い存在 下:「それで大丈夫なの?採算合うの?」 子:「最初のうちは収穫できる量が少ないので、厳しいです。でも、収穫できる量が増えて人数を集めることが出来るようになれば採算は合います。」 下:「私の知ってる範囲だけど、東京なんかで『たんかん』って1個で200円とか500円とかすることもあるんだよ?本当に大丈夫?安すぎない?」 子:「はい。その設定でも大丈夫です。『たんかん』を売るって話ではないですから。」 下:「だったらいいんじゃない?『たんかん』なんてそんなに出回ってるものでもないし、おいしいから。」 子:「で、メールマガジンを発行して、支援してくれた人に農園再生の進捗とか、屋久島の情報なんかも送りたいと考えているんです。」 参照:第18話 肝心なのは共有すること 下:「一体感とか共有感が得られるしね。面白いかも。私も東京にいたころに知っていた屋久島(のイメージ)と住んでみてからの屋久島とじゃ全然違うって分かったし。多分、知ってる人少ない情報になるよね。本当の屋久島の良さを知るって意味でも。」 子:「はい!そうなんです!!」 父:「この案は実現出来そうですか?」 下:「はい。苦労はいろいろあるでしょうけど、面白いと思います。やってみる価値はあるんじゃないかしら。こういった問題に興味がある人って割といますよ。でも、実際にはそういったものに参加する機会ってあんまりなかったりするんです。」 子:「おお!やった!!」 下:「それで、このプロジェクトはなんて名前にするの?」 子:「はい!実はすでに考えています。『屋久島農園再生プロジェクト』!」 下:「うん。シンプルで分かりやすくていいかも。」 子:「それで、会員なんですが、まんま会員だとお客さんみたいなので位置づけを考えました。一緒に農園再生に取り組んでいく仲間ですから、『プロジェクトサポートメンバー』っていう呼び名にしようと思います。通称『サポートメンバー』」 下:「そうだね。単純に会員よりはそっちの方がイイと思う。参加してる感じが出るし。でもさ、それなら共有感の部分で、もうひと工夫できるかもよ?」 子:「というと?」 下:「『会員証』を発行するの。えーと、この場合は『プロジェクトサポートメンバー証』ね。」 父:「それは、面白い。」 下:「でしょう?それで、ナンバーなんかもつけちゃってさ。管理しやすくなるでしょ?」 子:「おお!でも、手作りしかできませんよ?資金ないですし。」 下:「手作りだからいいんじゃない!」 子:「そう…なんですか?」 下:「そうよ。純朴さがいいのよ。で、屋久島らしさというか、農園再生らしさのある『メンバー証』がいいよね。」 父:「屋久島らしさ…?」 下:「手作りってことは、ラミネート加工くらいでしょ?だったら、たんかんの葉っぱなんかはさんで作っちゃえば?『たんかん』自体は知ってる人はいるかもしれない。でも、都会の人…というか産地にいない人は葉っぱは見たことないもの。」 子:「おお!いいですね!!生だと厳しいから、押し花にしてしまえば出来るかも!」 下:「いいね!」 子:「これで、プロジェクトの基礎部分は見えてきました!」 ![]() 下:「面白い!私も出来ることがあれば、なんでもお手伝いしますよ!」 解説:このように父子はいつも「下ン牧さん」にお世話になっているのです。 父:「それは心強い!ありがとうございます。」 子:「ありがとうございます!」 父:「よし、じゃあ今日のところは帰ってプロジェクトについてもう少し具体的に検討するか。」 子:「おう。」 父:「検討したら、教えてくれ。」 子:「は?」 父:「ここまで考えたんだ。お前なら出来るはずだ。」 子:「ええ~!?」 案の骨子が見えてきた父子。名前も「屋久島農園再生プロジェクト」に決まった。 この骨子をもとにプロジェクトを作り上げていく過程へと入っていくのだった。 次回"第20話 目指すべき地点"に続く。 登場人物 ![]() ![]() 下ン牧さん バックナンバー 第1章 「農園再生導入編」まとめ(第1話~第14話) 第15話 農園再生の弱点 第16話 父よ、「CSA」を知っているか? 第17話 本当に得たいものは得難い存在 第18話 肝心なのは共有すること |
第18話 肝心なのは共有すること
【第17話 本当に得たいものは得難い存在のハイライト】 息子は一緒になって農園再生を考えてくれる人を募集するという案を考えていた。 それは、支援をもらって、たんかんを送るというイメージだった。 しかし、それだけではダメだと息子は言う。 父:ハルオ:「『たんかん』を送るだけではダメだというのはどういうことだ?」 息子:ハルオjr:「だって、別に『たんかん』を手に入れるだけだったら、支援しなくてもいいじゃん。」 父:「そりゃそうだが、自分が一緒に取り組んだ、支援した『たんかん』だったら、とらえ方とか感じ方は違ってくるんじゃないのか?」 子:「そうかもしれないけど、それだけだとそれで終わっちゃうじゃない。」 父:「支援して『たんかん』が送られてくる。シンプルでいいじゃないか。」 子:「いや。この案の最大の特徴は『広がり』にあると思っているから、そこで完結させたくないんだよ。」 父:「さらに『広がり』を持たせるってことか?」 子:「うん。『たんかん』をおいしいと感じてもらえれば、少しは『広がり』があるかもしれない。だけど、もうひと押しが欲しいと思ってさ。」 父:「どうするんだ?」 子:「情報発信。耕作放棄地だった農園が再生していく過程とか、屋久島に住んでいないと分からないような情報を発信していこうと思う。」 父:「ふむ。」 子:「やっぱり、そういった生の情報が入って来て初めて、一緒に屋久島の農園再生に取り組んでいるな、って感じることができるんじゃないかと思うんだよね。」 父:「なるほどな。それは面白いな。」 子:「でしょ?」 父:「屋久島の情報はたくさん流れているかもしれないが、それは観光とか自然、環境に特化してしまっているという状況はあるだろう。最近でこそ、インターネットのブログで生活している情報も少しずつでているみたいだが、ほとんどが移住者によるものなのが現実なんだ。屋久島で生まれ育った人のものはごく一部。だから伝統や文化、農業などの情報はほとんどない。しかし、本当はそれこそが望まれている情報なのかもしれん、とは常々思っていた。」 子:「それは思ってた。屋久島の一面しかないなって。」 父:「住民目線というか、地元民目線の本来の屋久島が見えてくれば面白いな。」 子:「うん。そういう意味で支援してくれた人は屋久島について詳しくなってもらいたい、と思ってるんだ。」 父:「普通に屋久島のことを知ろうとしてもあまり得られない情報でってことだな。」 子:「うん。それで、支援してくれた人がさ、屋久島ってこういうとこなんだよ、そういうところでちょっと変わった農家の親子がいて、私はこういう支援をしているんだよ。って周りの人に話してくれたらその中の一人くらいは興味をもってくれるかもしれないって思ってさ。」 父:「そういう意味でも、一緒になって農園再生に取り組んでいるって感じを受けてもらうってことだな。」 子:「そうそう。一緒にやってる感っていうか、一体感だね。それがあったら支援してくれた人も、もっと面白いんじゃないかって思ったんだよね。」 父:「そのための情報の共有化か。それで、その情報はどのくらいの頻度で発信するんだ?」 子:「頻繁にってなると、他の仕事もあって無理が出てくるから、メールマガジンにして隔月くらいでいいんじゃないかって思ってる。それは支援してくれた人だけに発信するんだ。それ以外にも日々の作業とか、農園再生の考え方はブログとかで定期的に発信していければいいんじゃないかって思ってる。」 父:「二段構えだな。いいんじゃないか?お前がやるんだろう?」 子:「そうだね、情報発信はやる。父さんは農園再生の中心でいてもらわないと困るし。」 父:「役割分担だな。現場は父さんが中心に。情報はお前が中心にってことで。」 子:「というか、この案だとそれしかないけどね。」 父:「ふむ。なかなか面白そうじゃないか。取り組んでもいいかもしれん。一度あの人に相談してみるか。」 子:「下ン牧(しもんまき)さん?」 父:「ああ。あの人なら(有)原の里のアドバイザーもしてくれてるし、第一線の人だからこの案が実現可能か、本当に広がりを持つことができる可能性があるかを判断してくれるはずだ。」 解説:下ン牧さんは(有)原の里のアドバイザーをしていただいている女性の方で、公私ともに父子ともども非常にお世話になっています。 この農園再生の運営部分についても、いろいろと相談にのっていただき大変お世話になっています。 ここで名前に使った「下ん牧」は屋久島原集落の地名です。はっきりとどの辺というわけではないのですが、里の中からみて西側のことを指します。特に集落の西側の境目付近はこの名前で呼ばれることが多いです。彼女は集落の西側に住んでいらっしゃるので、この名前にしてみました。 子:「そうだね。早速、相談してみよう。」 農園再生の運営について、支援をもらい『たんかん』と情報を送るという案を確認した父子。 その実現性と、『広がり』の可能性について「下ン牧さん」に相談をすることしたのだった。 次回"第19話 プロジェクトの骨子"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1章 「農園再生導入編」まとめ(第1話~第14話) 第15話 農園再生の弱点 第16話 父よ、「CSA」を知っているか? 第17話 本当に得たいものは得難い存在 |
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