第13話 うごめくもの
【第12話 再生農園拡大!?のハイライト】 父の衝撃の一言は決定事項だった。 そして再生農園を拡大することになった父子。 新しい農園には新しい問題が待ち受けているのだった。 父:ハルオ:「さて、あたらしい再生たんかん園の作業にとりかかるか。」 ![]() 息子:ハルオjr:「新しい方の再生たんかん園って呼びにくいな。」 父:「そうか?」 息子:「今までやってた方を第一再生たんかん園、新しい方を第二再生たんかん園って呼ぼう。」 父:「そうか。用途がよく分からんがお前が言うなら、そうしよう。」 息子:「で?やっぱり草払いからやね。」 父:「こっちは草も枯れてないし、面積も狭いからすぐ終わるだろう。」 ~8時間後~ 息子:「おお!ほんとだ。1日で終わるとは!!」 解説:第一再生たんかん園は草が枯れていたため、ハンマーカッター(自走式草刈り機)が使うことが出来ず、また草刈り機の回転でからまったりして非常に効率が悪く、草刈りだけで3日も要しました。 参照:第6話 地をはうもの ~翌日~ 父:「草払いも終わったし、今日は母さんも参加できるから、防風林の切り下げをしよう。」 解説:防風林の切り下げは日当たりや風通しを良くするための非情に大切な作業です。 参照:第5話 光をさえぎるもの ![]() ギコギコギコギコ… 息子:「母さん、相変わらず身軽やな。」 母:「まかしとけ!」 解説:農家のうち、夫婦で農作業を行うのは全体の半分くらいだと思います。果樹農家の女性は農作業を行うとき、男性と同じように高所での作業を行います。 母は大工だった祖父を若いころから手伝っていたこともあり、非常に身軽で木にもするすると登ります。 あ、もちろん父も息子も木に登っての作業はしていますよ。 母:「ん?なんか匂うね…?」 父:「そうか…?」 息子:「…本当だ。甘いにおいがする。」 母:「ここからだね。」 ![]() 息子:「…ここはたしか、害虫に食われた木だね。なんか、かすかに甘いにおいがする。」 父:「じゃあ、テッポウだな。」 息子:「テッポウ?」 父:「ああ、木に巣くってるのはテッポウの幼虫だ。卵を木に産みつけて木の中で孵化するんだ。木がそのまま食糧になって、成虫になるまで木の中で過ごす。こいつに食われると木が弱って最終的には枯れてしまうんだ。たんかんやぽんかんにとっては本当に厄介な害虫だ。」 解説:『テッポウ』とはゴマダラカミキリムシというカミキリムシの呼び名です。なぜ『テッポウ』と呼ぶのかは分かりません。おそらく方言だと思います。木の中を食べながらもぐり続け、成長する害虫です。幼虫の間は甘ったるい臭いを発します。この虫が木に発生し続けると高い確率で枯れてしまいます。 成虫は飛ぶことが出来るので、発生した園から近隣の園に容易に移動が可能で伝播が早く厄介な害虫なのです。 ちなみに母は嗅覚が鋭く、よく匂いに気づきます。次が息子。一番鈍いのは父のようです。 父:「穴が開いているところはないか?」 息子:「ええと…あった!ここだ。木くずみたいなのも大量に出てるわ。」 父:「それはテッポウのクソだ。穴を針金でつくじってテッポウを引きずり出せ。」 解説:「つくじる」とは屋久島の方言で「つつく」+「ほじる」という意味あいです。 息子:「よし…。うを!?出てきた出てきた!!」 ![]() 母:「これは大きいね!」 父:「ああ。親指大もあるのは初めて見た。普通は小指大くらいだからな…。」 息子:「それだけ、この荒れた環境がテッポウに適していたってことか。」 父:「そうかもしれんな。」 解説:殺虫剤によって殺してしまうという手もありますが、刺激が強いのであまり使いません。この後も次から次に『テッポウ』が発見され、最終的に十数匹「つくじり」出して、退治しました。 父:「さっさと終わらせて、ぽんかん園の方もやってしまわなければな。」 息子:「あそこか…。」 草刈り、防風林の切り下げ、肥料撒き、剪定と1ヶ月を費やし第二再生たんかん園の導入作業を終えた父子。 次は第三の再生農園、再生ぽんかん園へと取り掛かる。 しかし、そこでの作業は壮絶なものであった。 次回"第14話 作業効率と立地"に続く。 登場人物 ![]() ![]() 母 バックナンバー 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第4話 父子で道を切り拓け! 第5話 光をさえぎるもの 第6話 地をはうもの 第7話 父の夢 第8話 農と業と農業 第9話 人間だって同じ 第10話 思い切りが肝心 第11話 再生者の責任 第12話 再生農園拡大!? スポンサーサイト
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第12話 再生農園拡大!?
【第11話 再生者の責任のハイライト】 殺菌剤をぬり、枝を燃やして処理して周囲への病気や害虫の蔓延を防ぎ、農園再生の導入部分の作業を終えた父子。 それは再生者としての責任をともなう大切な作業だった。 一段落してホッとしたのもつかの間、父から衝撃的な一言が。 登場人物 父:ハルオ:「実はな、再生農園を広げようと思っている。」 息子:ハルオjr:「えっ!?」 父:「場所なんだがな…。」 子:「待て待て待て待て!再生農園を広げようと思っているって言った?」 父:「ああ、言った。」 子:「本気か?ここの農園が増えただけでも作業的にはだいぶ増えてるんだけど。」 父:「それはそうだが、ここの農園が増えたところで、収穫の量は少ししか変わらん。」 子:「まあ、そりゃそうだけど。完全復活まで何年かかるか分からないんだから。最初のうちは微々たるもんだろうな。」 父:「少なくとも来年(2012年)はほとんど収穫はないと思っていいだろうな。」 子:「それは、他の園をやっても一緒だろ?」 父:「だから、だよ。だからもう少し農園を拡大できる。」 子:「はぁ?」 父:「収穫がない、ということは、収穫の作業がないということだ。多分余力が出るのは来年(2012年)までだ。」 子:「それ以降は?」 父:「やってみなければ、実際にどのくらいの作業量になるか分からないが、おそらく増やせないか、少しは増やせるかくらいだと思う。」 子:「最近、悩んだ様子だったのはそれだったのか…。」 父:「それで、場所なんだがな。」 子:「ちょっと!決定事項なの?」 父:「ああ。出来る限りの農園再生をすることに決めたからな。」 子:「マジか…。」 父:「最初に見に行った耕作放棄地があるだろう?場所はそこだ。」 ![]() 補足:耕作放棄地については 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! をご参照ください。 子:「ああ、思い出した。思いっきりヤブになってた所ね。」 父:「あそこも、所有者が亡くなってな。管理する人がいなくなったんだ。子供は島にはいなくて、農園を管理してくれる人を探していたんだ。」 子:「そうか…。もしかして、もう引き受けた後なの?」 父:「そうだ。」 子:「だから、決定事項だったのか。」 父:「ちなみにな、その人はもう一つ『ぽんかん』園を持っていてな。そこもやるからな。」 子:「は?一気に2つの園を拡大すんの?」 父:「そうなるな。」 子:「で、最初の再生農園と今度の2つを足すとどれくらい拡大したことになる?」 父:「再生農園が3つで、ウチの農園全体と同じ広さだから、ちょうど倍増ってところだな。」 子:「倍増?マジか…。」 父:「お前が帰って来て働き手が倍増したんだ。仕事も倍増でちょうどいいだろう。それでも大きな農家に比べると半分から3分の2くらいの広さしかないんだぞ。」 子:「いや…。増えた分は収益性が低いから仕事だけ倍増だろ。」 父:「まあ、すぐに黒字になるような仕事ではないからな。」 子:「…。」 父:「まあ、なんとかなる。」 子:「…。」 父:「どうした?いきなりで怒ってしまったか?」 子:「…いや。決まったことなら仕方ない。前向きに考えよう。」 父:「お前はプラス思考だけが取り柄だからな。」 子:「だけって言うな。」 父:「段取りはこれまでと同じだ。一度経験しているから、スムーズにいくだろう。」 子:「そうだな。」 父:「そうとなれば、明日からでも早速取り掛かるとするか。」 子:「分かった。」 こうして再生農園を拡大することになった父子。 農園再生の作業はまだまだ続くこととなった。 しかし、新しい再生農園にはまた新しい問題があるのだった…。 次回"第13話 うごめくもの"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第4話 父子で道を切り拓け! 第5話 光をさえぎるもの 第6話 地をはうもの 第7話 父の夢 第8話 農と業と農業 第9話 人間だって同じ 第10話 思い切りが肝心 第11話 再生者の責任 |
第11話 再生者の責任
【第10話 思い切りが肝心のハイライト】 剪定(せんてい)により、病気や害虫に侵された部分を取り除いた父子。 いよいよ、収穫にむけた作業に取り掛かると思いきや、 それよりもしなければならいことがある、と父は語る。 父:ハルオ:「非常に重要な作業が残っている。」 息子:ハルオjr:「重要な作業って何よ?」 父:「ふつう、手術をした部分はどうする?」 子:「は?えー、まあ包帯とか巻くんじゃない?」 父:「そうだな。ばい菌なんかが入るのを防ぐだろう?木も一緒だ。切断面は弱い。」 子:「で?どうするの?」 父:「薬を塗る。」 ![]() 子:「これはどういう薬?」 父:「殺菌剤だ。切断面をコーティングするから外からの菌の侵入も防げるというわけだな。」 子:「ますます人間臭いな『たんかん』。」 父:「一通り塗り終わったら、次の作業だ。」 子:「うん。何すんの?」 父:「切ってしまった枝があるだろう?それは患部ということになるな。そこにはまだ病原菌がいる。」 子:「たしかに。」 父:「もし、それを放っておけばどうなる?」 子:「まあ、菌はしばらく生きてるだろうね。」 父:「そうだ。そうすれば、その菌がせっかく剪定(せんてい)した木にまた入り込むかもしれん。」 子:「たしかに。」 父:「最悪なのは、この園だけじゃなくて周りの園にも病気がうつっていくことだな。」 子:「…再生をした意味が無くなるってわけか。」 父:「そうだ。こういう時の処理の仕方は決まっている。燃やすんだ。というより他に方法がない。これだけの量の廃棄物を処理するのは大変だからな。」 子:「なるほど。」 解説:たき火などは法律で禁止されています。(危険性の問題とダイオキシン抑制のためだそうですが、詳しくは分かりません。)位置づけが難しいらしく、ある程度自治体ごとに条例によって色々と決められているそうです。農業における廃棄物などの償却はやむを得ない行為として認められています。ただし、無条件にしてもいいというわけではなく、消防などに連絡が必要だったりします。屋久島でも焼却の際には管轄の分遣所に届けます。 ![]() 子:「暑い…。」 父:「キリキリ燃やせよ。」 子:「分かってるよ。しかし、良く燃えるな~生木なのに。」 解説:柑橘の樹木は油分を大量に含んでいるため、良く燃えます。とはいえ、あまり大規模に燃やすと危ないので管理できる範囲内で燃やします。この時は切った量が大量だったため、まる3日間ほど燃やす作業に費やしています。 父:「こうして周囲に病気を伝播させない、というのも再生者の責任だな。それが出来なければやっている意味がないからな。」 子:「再生者の責任…か。重い言葉だな。」 父:「そうだな。でもこれは常に頭の隅に置いておかなければならんぞ。」 子:「…分かったよ。」 父:「さて、これでとりあえず取っ掛かりの作業は終わりだな。」 子:「そうなの?」 父:「あとは術後の経過を観察するというところだ。」 子:「ますます、人間の手術と同じだ…。」 父:「木の体力が回復しない事にはどうにも手がつけられんからな。」 子:「木も生き物だってことだなぁ。」 父:「しかし、これで再生の一番大事だと思われる頭のところの作業は分かったな。」 解説:ここまでの作業は県や町の技術員という専門家に意見を聞きながら進めています。話にすると4話~11話の8話分ですが、実際には他の仕事も間に挟みながら2ヶ月かかっています。 子:「じゃあ、しばらくは別の仕事をしながら様子見ってとこか。」 父:「…。…それなんだがな。」 子:「沈黙のあとのもったいぶった言い方って嫌な予感しかしないんだけど。」 父:「(苦笑)実はな、再生農園を広げようと思っている。」 子:「え!?」 園地の整備から始まり、土壌改良、病気・害虫に侵された部分の切除、 切断した患部の焼却処分と農園再生の第一段階を終えた父子。 ホッとしたのもつかの間、父から出た言葉は衝撃的なものだった。 次回"第12話 再生農園拡大!?"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第4話 父子で道を切り拓け! 第5話 光をさえぎるもの 第6話 地をはうもの 第7話 父の夢 第8話 農と業と農業 第9話 人間だって同じ 第10話 思い切りが肝心 |
第10話 思い切りが肝心
【第9話 人間だって同じのハイライト】 弱った果樹のケアの仕方は人間に対するそれとよく似ていた。 最初のステップとして土壌改良剤で木の回復を試みた父子。 少し間を置いて、枝の剪定(せんてい=切断)へと踏み出す。 父:ハルオ:「土壌改良剤を撒いてからしばらく経つし、そろそろ枝の剪定(せんてい)をするか。」 息子:ハルオjr:「といっても、かなりの量あるぞ。」 父:「まあ、今日1日ですべて終えなきゃならん、というわけでもないから、ボチボチやるか。…とは言っても他の仕事もしなければならんから、また助っ人を呼んである。」 子:「伯父さんのこと?」 父:「そうだ。」 伯父:「よう!どの木からやるんだ?」 父:「病気や害虫の侵食がひどいのから頼む。」 伯父:「よし!まかせとけ!!」 ![]() 子:「ええ!?チェーンソーでそんな根元から切るの?」 伯父:「ん?当たり前だろう。」 父:「こういう時はな、中途半端に先っぽだけ切っても意味がないんだよ。」 子:「なんで?」 父:「中途半端に残すと、病気が死滅しないからまた広がるだけだしな。」 解説:病気や害虫にやられている枝はその根元まで侵食が進んでいます。そのため、根元を残してしまうと病原菌や害虫の卵などが残ってしまう可能性が出てきます。再発したら再び病気や害虫が広がってしまうので、剪定(せんてい)の意味が無くなってしまいます。そのため、危険性があると思われる部位まで切り取ってしまう必要があるのです。この思い切りが今後の園の再生に非常に重要です。 伯父:「この木は完全に根までやられてるな。どうする?」 父:「ほっといても枯れるだけだし、周りの害になるから根から切ってくれ。」 伯父:「分かった。ハルオjr!運びやすい大きさに切り分けておくからな。」 子:「おお。ありがとう。」 ![]() ~2日後~ 父:「根元から切っていく剪定(せんてい)は、人間で例えると大手術みたいなもんだ。だから、あんまりいっぺんにすると木が弱り果ててしまう。特にひどい十数本は終わったから、今回はこのくらいにしておこう。」 伯父:「そうだな。」 子:「普通の剪定はいつすんの?」 解説:一般的に果樹の剪定(せんてい)とは、栽培がしやすい木の形を作ること、日当たりを良くし育成させやすい環境を作ること、余計な枝を切りのぞき実をつけやすい木を作ることなどの目的で行われます。今回の剪定は病気や害虫にやられているところを切除する目的で行われおり、緊急的なものなのです。屋久島たんかんの場合、剪定は収穫の終わった3月中旬以降に行われるのが一般的です。 父:「普通の剪定はボチボチでいいから、ゆっくりやっていくよ。」 子:「そうか。」 父:「それよりもしないといけない事があるからな。」 人間で言うと患部にあたる部分を剪定により切り除いた父子。 いよいよ、収穫をゴールとした作業にとりかかると思いきや 実をつけさせ、収穫にむけた作業よりももっと重要なことがあると父は言う。 果たして、このタイミングで重要なこととは一体? 次回"第11話 再生者の責任"に続く。 登場人物 ![]() ![]() 伯父 バックナンバー 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第4話 父子で道を切り拓け! 第5話 光をさえぎるもの 第6話 地をはうもの 第7話 父の夢 第8話 農と業と農業 第9話 人間だって同じ |
第9話 人間だって同じ
【第8話 農と業と農業のハイライト】 農園再生は、農業の経営に対する挑戦でもあった。 息子:ハルオJrが心に何か引っかかる中、弱った木のケアは始まるのであった。 父:ハルオ:「さて、いよいよ本格的に木のケアに取り掛かれるな。ここからが本番…というか、スタートだな。」 息子:ハルオjr:「やっぱり最初は病気にやられた枝を切っていくの?これ以上広がらないように。」 ![]() 父:「弱った木にいきなりそんなことするわけないだろうが。」 子:「なんで?だって、ほっとくと他の病気になってない木にまで感染してしまうじゃない。」 父:「それはそうなんだがな、物事には順番というものがあるだろうが。」 子:「順番?」 父:「そうだ。木だって生きているんだ。そう考えるとおのずと順番が決まってくるだろう?」 子:「さっぱり分からん。」 父:「病気にやられている木は、例えれば病人と同じだ。そして、枝を切る、ということは手術をするのと同じってことだな。」 解説:ここでいう「枝を切る」という行為は枝の先端部分を切るという意味ではなく、枝の根元から切るという意味です。それは、病気感染した枝は根元まで病原体に侵されているので、根元から切断しなければ対処にならないからです。 子:「…ずいぶんと人間くさいな。」 父:「だから言っただろう、木だって生きている。同じなんだよ。」 子:「同じ…かぁ。」 父:「体が弱っている人間に手術をしても体力がもたないように、弱っている木を切ってしまうとやっぱり持たない。特にデリケートな『たんかん』はな。」 子:「基礎体力がないってことね。」 父:「そんな時、手術をする前に病人に栄養をつけて、体力をつけようとするだろう?木も同じと考えれば、やることはまず、栄養を与えることだ。」 子:「…つまり肥料をやるってことね。」 父:「そうなんだが、普通の肥料だと強すぎる。だからまず土壌改良剤で栄養をつける下地を作っていく。まあ、土壌改良剤にも多少の養分は入っているし、差し当たりはそれで十分だろうからな。」 子:「病院食、みたいなもんか。」 父:「まあ、そんなもんだ。で、これが土壌改良剤だ。」 解説:土壌改良剤とは、名前の通り、土の改良を行うために使います。改良とは、育てる農作物に適した土にすることです。それは、土の成分をコントロールして栄養分を農作物が吸収しやすくする、という意味です。 ここでは苦土重焼燐(くどじゅうしょうりん)という土壌改良剤を使っています。 ![]() 父:「じゃあ、着替えて撒くか。」 子:「よし!」 ![]() 解説:肥料を撒くと非常に細かい土の粒子が飛び散ります。それが繊維に付着すると洗っても落ちません。ですので、ズボンの上からビニール製のカッパのズボンを履いています。 これを履き忘れると母にかなり怒られます。 ~2時間後~ 父:「よし。終わったな。」 子:「夏場じゃなくてよかったよ。」 父:「これで下地ができたからな。少し間を置いてから枝の切除にかかるか。」 子:「それは技術がいるから、まだオレには無理だな。」 父:「そうだな。だから、後片付けを頼む。」 子:「ここ最近、木を運んでばっかりだな…。」 木もやはり生きていて、ケアの仕方も人間と同じだった。 その最初のステップとして土壌改良剤を撒いた父子。 いよいよ、木に手を入れていく。 次回、"第10話 思い切りが肝心"に続く。 登場人物 ![]() ![]() バックナンバー 第1話 息子よ、「耕作放棄地」を知っているか? 第2話 息子よ、これが「耕作放棄地」の問題だ! 第3話 父の決断 第4話 父子で道を切り拓け! 第5話 光をさえぎるもの 第6話 地をはうもの 第7話 父の夢 第8話 農と業と農業 |
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